「遺族年金は5年で終わる」と聞いたら確かめたいこと
2028年4月からの遺族厚生年金の見直しは、SNS などで「5年で終わる」と受け止められて広がりました。条文に当たると、そう言える人は限られます。よく見かける受け止め方ごとに、条文で確かめます。
見直しの規定は 2026年10月4日 の時点で未施行の法律です (施行は2028年4月1日)。施行までに改正されると、判定が変わります。 所得による支給停止の基準額などを定める政令は、まだ出ていません。
「遺族年金は、全員が5年で終わる」
5年の規則が当たるのは、60歳未満の配偶者のうち、子の遺族基礎年金を受けない人と、60歳より前に受け終わった人です
新しい規則 (厚生年金保険法 62条1項) は「受給権を取得した当時、60歳未満の配偶者」で、子の遺族基礎年金を受けない人 (または受けていて60歳前になくなった人) の遺族厚生年金です。
- 死亡の当時60歳以上の配偶者は、これまでどおり期間の定めのない遺族厚生年金です。
- 18歳の年度末までの子がいて遺族基礎年金を受ける間は、これまでどおりです。
- 妻は、2048年3月31日までに夫が亡くなった場合、1989年4月2日以後に生まれた人だけが対象です (改正法 附則15条1項)。2028年度末に40歳以上の妻は、この期間は対象外です。
- 遺族基礎年金 (国民年金) には、5年の規則はありません。
「5年たったら、ゼロになる」
5年の後は、前年の所得で支給停止を判定します。所得が基準額以下なら続きます
5年を経過した日 (基準日) の属する月の翌月分から、前年の所得が「第一所得基準額」を超えるときに、超えた額の3分の1 (第二所得基準額を超える分は2分の1) に当たる額の支給が止まります (厚生年金保険法 65条1項・2項)。所得が基準額以下なら、5年の後も支給は続きます。
- 基準額は扶養親族の数に応じて政令で決まります。政令はまだ出ていません。
- 障害年金を受ける場合などは、その間は所得による停止を当てはめません (厚生年金保険法 65条4項)。
- 受給権は65歳に達したときなどになくなります (厚生年金保険法 63条2項)。
- 新しい規則の遺族厚生年金には、本来の額にその4分の1が加算されます (厚生年金保険法 62条1項)。厚生労働省は「約1.3倍」と説明しています。条文の加算に期限はなく、5年の後も続きます (厚生労働省の説明では「継続給付」)。
厚生年金保険法 65条1項 (2028年4月1日施行の版から): 「…当該各号に定める日から起算して五年を経過した日(以下この条において「基準日」という。)の属する月の翌月以後の月分について、特定受給権者の前年…の所得が、…政令で定める額…を超えるときは、支給停止額に相当する部分の当該遺族厚生年金の支給を停止する。」
「いま受けている遺族年金も、5年で終わる」
2028年4月1日より前に亡くなった場合は、見直し前の規則のままです
施行日 (2028年4月1日) より前に支給事由が生じた遺族厚生年金は、遺族の範囲・失権・支給停止の規定を「なお従前の例による」とされています (改正法 附則14条2項)。すでに受けている遺族厚生年金に、新しい5年の規則は当たりません。
「夫を亡くした妻だけの話」
妻を亡くした夫は、受けられる人が広がります
見直し前は、妻を亡くした夫は死亡の当時55歳以上が要件で、60歳まで支給が止まりました (遺族基礎年金を受ける間を除く。見直し前の厚生年金保険法 59条1項1号・65条の2)。見直し後は、60歳未満の夫も新しい規則で遺族厚生年金を受けられます。夫には生年月日の区切りがありません。
「中高齢寡婦加算がすぐなくなる」
中高齢寡婦加算は、亡くなった日に応じて25段階で縮小します
2028年4月1日以後に亡くなった場合、見直し前の62条の加算に、亡くなった日の区分の率を掛けた額になります (改正法 附則15条2項・附則別表第一)。2028年4月2日〜2029年4月1日の死亡は0.962、2040年4月2日〜2041年4月1日は0.500、2052年4月2日〜2053年4月1日は0.038。それより後の死亡では加算がありません。
自分の場合を確かめる
判定で、生年月日と亡くなった日 (想定の日でも) を入れると、どの規則に当たるか、5年を経過する日、65歳の日、中高齢寡婦加算の率を条文に当てはめて示します。厚生労働省の説明は遺族厚生年金の見直しについてにあります。
この道具は条文に日付を当てはめた目安で、個別の受給の決定ではありません。生計維持の認定、加入期間などの要件、ご自身の場合の扱いは、年金事務所・ねんきんダイヤル (日本年金機構)で確かめてください。